ソロキャンプのすすぬ

バイクとキャンプと時々ヨメ

階段から落ちる夢を見たと思ったら現実世界から転げ落ちていた

こんにちは。もぐおです。
我が家は賃貸マンションの2階の一室を借りて妻と暮らししているのですが、間取りが少し変わっています。
マンションは2階建てで3部屋ずつの合計六世帯が暮らせるのですが、それぞれの部屋の入口はすべて1階にあるんです。
なので2階の部屋の住人は玄関を開けたらすぐに階段があり、その階段を上った2階の部屋が居住スペースとなってます。

毎日家を出かける時は階段を下りてから靴を履き、家に帰った時は靴を脱いでから階段を上ります。
出前や宅配便も階段を下りてから受け取り、階段を上ってリビングへと持っていきます。
バイクのマフラーを交換した時には取り外したマフラーを二階に持っていき、さらに物置きとして使っているロフトまでマフラーを担ぎながらハシゴを上ったりもしました。

比較的に新しいマンションのためオートロックやインターホンモニター等も完備されており、amazonから荷物が届いた時はマンションのオートロックを解除してから玄関のチャイムが鳴らされるという流れです。
インターホンモニターは留守の時に誰が来たのか録画した映像を見れる便利な機能が搭載されており、未確認の録画データがあると赤いランプがピコピコと光ってお知らせする仕組みになってます。

かくいう僕はスマホアプリのお知らせとか通知が何件ありますよって表示されてると、すべてを確認してまっさらな状態にしないと気が済まない性分です。
そのため宅配便が来たらマンションのオートロックを解除してから急いで階段を下りて、部屋のチャイムを押される前に玄関の扉を開けるようにしています。
少しでも遅れてしまうと階段を下りている最中に玄関のインターホンを押されてしまい、荷物を受け取ってからモニターに記録されている先ほどお会いしたばかりの方の映像を削除するという手間が発生するからです。

このマンションに引っ越してきてからこんな生活を4年近く続けてきました。まさに階段と共に暮らす生活。切っても切れないズブズブの関係です。

そんな私が先日初めて階段を踏み外して転げ落ちました。

いや、実際にはそんな夢を見たと思ってました。今でも、もしかしたら夢なのかも知れないと思ってます。確かに体は痛いのです。足にも尻にも背中にも内出血や打撲の痕が残ってます。それなのに現実感が全く無いんです。

思い返せば昨夜はウイスキーを飲むための氷が切れてしまい2杯目をストレートで飲むことになりました。
いつもは1本で満足する葉巻を2本も吸ってしまいました。
妻は早めにベッドに入り、僕は入念に歯磨きをしてから水を一杯飲み、妻の横で眠りにつきました。
ふと軽い尿意を感じて眠りから覚めた時、外はまだ暗く、こんな時間に起きるのは珍しいなと感じながらも隣で寝ている妻を起こさないようにのっそりと起き上がり、まだ少し意識にアルコールが残っている中でトイレに向かったんです。

気が付いたら僕は階段から足を踏み外して体中をしこたま打ちながら転げ落ちてました。

我が家の間取りは一階は玄関のみ、二階にリビングと寝室、キッチン、トイレ、お風呂、そしてロフトへ繋がるハシゴがあり、ロフトは空調が効かないので物置状態になっています。
階段を下りるときは外出する時か来客があった時しかありません。家に帰ってきたときに急いで階段を駆け上がってトイレに駆け込むことはあるけれど、階段を下りてトイレに入るという習慣はこれまでの僕の生活を振り返ってもありません。その階段から夜中の2時過ぎに足を踏み外して転げ落ちたんです。

なぜ?

どうして俺は階段から落ちたんだ?

体中に痛みを感じながらも、思考は完全に二つのことしか考えられません。まったく意味が分からない。階段から落ちる理由がない。
二階から妻の叫び声にも似た悲鳴が聞こえて来ました。ああ、大丈夫だ。体は動く。ドタドタと足音を響かせながら心配して駆け寄ってきた妻に、大丈夫だよ、なんでも無いよ、とだけ伝えて、今まさに転げ落ちてきた階段を上ってトイレに入りました。

トイレで用を足しながらも痛みで冴えた意識は完全に混乱していました。なぜ俺は階段を下りていたんだ?玄関に行って何をしようとしていた?寝ぼけていたのか?酔っていた?
寝ぼけていても、今以上に酔っぱらっていた時だって、これまでトイレと玄関を間違えたことなんて一度もないじゃないか。まるで何かに引き寄せられるように気が付いたら階段を下りていた。
トイレから出ると妻が心配そうな顔で待っていました。少し体は痛いけど大丈夫だよ。きっと寝ぼけていただけだ。まだこんな時間だから早く寝よう。そう言ってまた二人でベッドに入りました。

翌朝いつも通りの時間に目を覚まして起き上がろうとすると体のふしぶしが痛む。何故だろうと記憶を探ると、昨夜に階段から落ちたことを思い出した。でも、今考えてもなぜ階段を下りようとしていたのか分からない。本当にまるで引き寄せられるように玄関に向かっていた。
寝起きでまどろむ意識がモゾモゾと寝返りを打つたびに痛みで覚醒されていく。このまま寝てても仕方がない。とりあえず起きて仕事に行く準備をしなくては。

妻はいつものように寝起きのホットミルクティーを入れてくれて、ふーふーと冷ましながらそれを飲み、トイレで朝一番の用を足す。ふと洗面所で背中の痣を確認したら、おそらく階段の角に打ち付けたのだろうクッキリとした紫色の青タンが2つ残っていた。
同じようなものが左足のふくらはぎ外側と、左の尻、左上腕、なぜか左手の小指もヒリヒリと痛んでいる。昨夜は左足を踏み外してそのまま滑り落ちたのだろうか?なんなら朧げな記憶では前回り1回転ぐらいしたような感覚すらある。
右半身はまったく無傷で左側だけ傷だらけ。これじゃ半身創痍だな。

リビングに戻ったら妻が着替えを用意してくれていた。綺麗に折り畳まれているシャツを着る前に、どうせだからこの傷を見て貰おうと自らの傷口を人に見せたがる悪戯心に火がついて背中のアザを妻に見せてみた。
その時の妻の反応は僕が想定していたものとは全く違っていたのだ。
どうしたの!?何があったの!?とまるで悲鳴のような声を上げて心配してくる。どうしたの、だって?昨日の夜に俺は階段から落ちたじゃないか。何をそんなに驚くことがあるんだ?そのまま妻に聞いてみる。だって、俺は昨日の夜に階段から落ちたじゃないか。そう言うと、ハッとしたように、そうかそうかと納得したように、そして、わあー大丈夫?痛くない?と僕が想定していたいつもの妻の返答が返ってきた。

はたして俺は、昨日の夜に階段から落ちたのだろうか。

人は思い込みだけで体に火傷ができるという話を聞いたことがある。たとえばカンカンに熱したヤカンで火傷した経験がある人が、ヤカンを熱いと思い込みながら触ってしまった時にまるで火傷のような痕が浮き出るらしい。
もしあの階段を落ちたのが夢ではなく現実だとしても、今の妻の反応はまるで、無かったことが有ったかのように辻褄を合わせるような振る舞いに思えてならない。
そう思うと、もしかしたら今自分がいる世界は、これまでの世界とは別の世界、いうならば夢想世界におり、現実世界の自分は階段から落ちてなんかなく、今でも現実世界でのうのうと暮らしているのではないだろうか。
もしかすると昨晩、我が家の玄関には夢想世界と現実世界を繋ぐゲートのようなものが繋がっており、俺は引き寄せられるように階段を転げ落ちてこっちの世界に放り出されてしまったのではないだろうか。

実は先日、半月ほど前になるが、僕の妻も階段から転げ落ちている。
前々から何もないところで転ぶような危なっかしい足取りをしており、最近は歳でお腹が出てきたからか足を引きずるように重たそうに歩いていたのでいつかは転ぶだろうなと思っていた。しかし、本当にそうなってしまっては夫としては心配だし、渋谷のクラブが好きで音楽を聴きながら踊るのが好きな妻が歩けなくなってしまっては人生の楽しみが無くなってしまう。
どれだけ効果があるのか分からないが、そんな妻を心配してツーリング先のお土産として歳をとっても元気で歩けるようにと草履のお守りを買ってきたことがある。お守りというのは自分で買うよりも誰かに買ってきてもらうのが大事だとどこかのお坊さんがテレビで言っていた。誰かの気持ちが詰まっているお守り、というのが大切なんだそうだ。
そのお守りは翌日だか翌々日に妻が足繁く通っているクラブで踊ってたら片方の草履が千切れてどこかに行ってしまったようだ。

もしかしてあの時既に妻は夢想世界の妻と入れ替わっていたのではないだろうか?

そう考えると、最近急に片付けに目覚めて部屋中に散らかっている洋服をメルカリで売りに出しているのにも、これまでは夫の仕事と言って放置していたお風呂掃除をやるようになったのも、小まめに洗い物や洗面所など水回りの掃除をしているのにも納得できる。
そして、そうなると今この夢想世界にいる妻は元々、現実世界にいた僕の妻であり、太ってしまって履けなくなったジーンズやTシャツを部屋の片隅にうず高く積んでいたあの妻に戻ってしまったのではないだろうか。
そんなことを考えながら視界の片隅でピコピコと留守中の来訪者を知らせるインターホンモニターに目をやった。

昨夜は光ってなかったはずだ。

昨日の夜に誰かが訪ねて来ていたのだろうか?そんな夜遅くに?俺はチャイムの音を聴いて玄関に向かっていたのか?
なんだか嫌な予感がする。見てはいけないような、知ってはいけないような気がする。

再生ボタンに人差し指を掛けた時、ふと妻を見るといつものように朝のニュース番組を見ながらうつらうつらと眠たそうな顔をしていた。

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